[文化関連事業]
■国語教育
埼玉県立浦和第一女子高講師 長島猛人(60歳)
「三十年の漢文素読」
人が生きていく上で重要なのに学校教育の中では後回しにされる教養や格調といったものを教えようと、30年間、生徒に毎朝10分間、「論語」を素読させた。
教師の模範朗読の後、生徒全員で復唱するオウム返しのような方法は、現代教育では蔑視されがちだが、生徒たちに達成感や充実感を与え、さらに「知的な自信」を身に着けさせた。
テストのように結果を数値化はできないが、漢文素読が、人を大きく成長させる経験になると実感した。
■算数・数学教育
大阪教育大付属池田中数学科 代表・上原昭三副校長
「九九表に隠された謎を暴こう!」
「数学は『考える』教科であり、『どう考えたか』を正確に説明する教科」として、生徒の習熟度に合わせて少し難しい「秘密」が隠されている九九表を材料に、課題学習を実践した。
「2の段と3の段の数を足すと、5の段の数になる」といった規則を、生徒が自分で見いだし、その根拠を明らかにしたうえで、他者に説明する。ゲーム的な要素も加え、本気で議論し合うことを通じて、数学的な言語活動を問い直した。
■社会科教育
興南学園興南中教諭(那覇市) 門林良和(30歳)
「教室と世の中の津梁(しんりょう)となる社会科授業の実践」
基地問題などを抱える沖縄では、社会科は教室と社会をつなぐ津梁(懸け橋)とならなければいけないと考え、「正解のない問題」をテーマに授業を行った。
「命の価値は平等か」というテーマでは、弁護士から賠償制度や死刑制度の解説を受け、意見交換。「新しい沖縄の旅を提案する」では、旅の企画、パンフレット作成、発表などに挑んだ。その結果、生徒たちが社会と主体的に向き合う意識を持ち始めた。
■生活科・総合学習
水戸市立稲荷第一小教諭 池田裕子(41歳)
「自己理解・他者理解を深め自己肯定感を育み、『生きる力』を育むキャリア教育の実践」
様々な人の職業生活や、幅広い人の生きざまを紹介する新聞記事などを掲示したキャリア・カフェを開設。さらに、身の回りの人の仕事を取材・発表する学習をクラスに取り入れた。
引きこもりや若年無業者(ニート)が深刻な社会問題になる中、人の生きざまを見つめることで、自己・他人を肯定的にとらえるようになり、何事にも積極的な心を育むことができた。
■外国語教育
愛知県豊橋市立青陵中教諭 桃野己恵子(58歳)
「共存共栄のための国際コミュニケーション力を身につける英語授業」
資料に何が書かれているかだけでなく、「なぜこう書いたか」「それをあなたは良いと思うのか」まで問うPISA型読解力を英語の授業で研究、実践した。
生徒に対し、まず英語で読む、聞く、話す、書くという四つの基本的な技能を徹底的に鍛えた。さらに、テキストに登場する人物の行動などを自分に置き換えた場合、どうするかなどを生徒同士が話し合うことで英語力を向上させた。
■学校づくり
静岡県浜松市立中瀬小元校長 河島秀夫(63歳)
「学校を変える校長の仕事」
校長の主な仕事は、教職員の管理や来客への応対などだが、これだけで学校を変えることはできない。
学校を変える校長の仕事として〈1〉管理の校長から目標(ビジョン)達成の校長へ〈2〉指示によって動く校長から、自ら行動する校長へ〈3〉手続きの校長から、実践内容にかかわる校長へ――の三つをテーマに掲げ、実践してきた。
自ら行動と実践をする校長となることで、学校と教職員の意識を変えることができた。
■地域社会教育活動
宇都宮市立旭中教諭 田崎透(50歳)
「大いちょうプロジェクト」
宇都宮市の天然記念物に指定されている大イチョウは、1945年の空襲を乗り越えて成長を続け、市民を勇気づけている。今年3月まで勤務した市立一条中では、このイチョウを教材に、学校全体で平和の大切さを学んだ。
3年生のクラスでは「総合的な学習時間」を使って、宇都宮空襲とイチョウの歴史を調査。文化祭のステージで発表を行った。
さらに、クラスの有志が種子500個を拾い集め、科学部員がプランターを使って発芽させ、植樹も行っている。
■特別支援教育
福岡県久留米市立小森野小教頭 山田俊之(56歳)
「リズム身体活動(ボディパーカッション教育)を取り入れた特別支援教育(発達障害、聴覚障害)の実践を通して」
手拍子や足踏み、体をたたくなどして音を出す表現活動を、25年間実践している。聴覚障害者も体の振動で他者とつながり、健常者も一緒に楽しめる教材で、NHK交響楽団との共演も実現した。
様々な支援を要する子どもが同じ教室で学ぶ機会が増えた今日、次世代の指導者を通して教育法を広めようと、教則DVDの無償配布も行っている。
■幼児教育・保育
福井県教育庁地域サイエンス博士 山田儀一(68歳)
「子どもの感性を育む自然体験」
クロメダカなどが生息する田んぼでのコメ作りや里山での活動を通じて、自然の中で子どもたちの五感を養い、環境を大切に思う心を育んできた。
水田の小川に足をひたし、野山の草花に触れ、里山に生息する昆虫を追いかけるなど、自然の中で思い切り遊ぶ体験を重ねることで、子どもは生き生きとした表情を見せ、命の尊さや他人と助け合う心の大切さを実感できただけでなく、好奇心や探求心も養われた。
■音楽教育
千葉市立院内小教諭 桶田加代(39歳)
「<長唄童謡>を楽しむ音楽の授業」
日本の伝統音楽を愛する心を育てるため、歌詞が子供たちにわかりやすく、みんなで歌うことができる<長唄童謡>を授業に取り入れた。
長唄のような伝統音楽に親しむには、小さい頃からその良さを少しずつ教える必要がある。情景をイメージしやすく季節感のある<長唄童謡>を選び、三味線の伴奏に合わせて歌うことで、子供たちは長唄の楽しさを学ぶことができた。さらに高学年では三味線を自分で弾きながら歌い、その音色や響きをさらに深く感じ取ることができた。
■美術教育
新潟県阿賀野市立笹岡小教頭 青木善治(47歳)
「自分の思いを豊かに表現する子どもの育成のための教師のかかわりと図画工作科の授業研修の在り方に関する一考察」
ちぎった紙で絵を描いたり、日用品を別の動物などに見立てるといった低学年の授業にビデオカメラを活用。数人の児童をクラスから抽出し、彼らの会話や行動を中心に記録した。
この映像を授業後に教師たちで見返し、同時に詳細な授業参観リポートを作成することによって、子どもがお互いに助け合い、創造的な提案を交わしている姿を浮き彫りにできた。