

第14回読売演劇大賞発表
杉村春子賞 草ナギ剛
「父帰る」「屋上の狂人」の演技
◆本格派役者の大輪開く
審査評 萩尾 瞳
作品と俳優がしっくり溶け合って、とびきりの化学反応が起きる舞台がある。俳優・草ナギ剛と菊池寛戯曲『父帰る』『屋上の狂人』は、そんな幸福な出合いだった。なにより、草ナギ剛は、この2作品で俳優としての奥行き、優れた資質を存分に花開かせてみせたのだ。
『父帰る』では、20年ぶりに帰った放蕩(ほうとう)者の父を許せない長男の矜持(きょうじ)と心中に潜む情愛に葛藤(かっとう)する賢一郎を演じ、誠実で物静かなたたずまいに内在する情と揺らぎを、見事に体現した。そこには、背筋美しい明治男が確かに存在していたのだ。
『屋上の狂人』では、日がな屋根の上で自分にしか見えない天人や天狗(てんぐ)とたわむれる義太郎を、ひょうひょうと清々(すがすが)しく演じた。この清々しさゆえに、幕切れの幸福感が柔らかに広がったのだった。
2作品の異なるキャラクターを自在に行き来したように、草ナギ剛は静と動、柔と剛、磊落(らいらく)と繊細、冷静と激情といった二律背反を軽やかに跳梁(ちょうりょう)する俳優なのだ。すでに『蒲田行進曲』(1999、2000年)のヤス役でも片鱗(へんりん)はうかがわせていたが、菊池寛戯曲との出合いでその資質はより顕在化した。新人というにはキャリア十分だけれど、本格派の役者として咲きたての大輪の花という印象なのである。
草ナギ剛の話 舞台の仕事で初めて賞をちょうだいすることが出来、大変光栄に思います。5年ぶりの舞台で緊張でいっぱいでしたが、本当に楽しかったです。
【くさなぎ・つよし】 埼玉県生まれ。SMAPのメンバーとして、テレビドラマ、バラエティー番組などで活躍。舞台は「蒲田行進曲」などに出演。32歳。
|