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読売新聞の顕彰事業


読売演劇大賞

第15回読売演劇大賞発表

最優秀女優賞 松たか子
「ひばり」「ロマンス」の演技

◆タフさ、優しさ 自然に
チェーホフの生涯を描く「ロマンス」で妹の役などを演じた松たか子(谷古宇正彦撮影)

審査評 岡本 螢

 松たか子さんという女優は、巧(うま)く演じようなどという姑息(こそく)な根性は、微塵(みじん)も持ちあわせていないのだと感じたのは、一昨年の『メタル マクベス』のランダムスター夫人(マクベス夫人にあたる)を観(み)た時だった。やや煩雑だった舞台の中で、彼女だけは、まぎれることも流されることもなく、凛(りん)として悪女を演じきっていた。

 彼女の瞳の力強さや美しい立ち姿は、多くの人が評するところで『ひばり』のジャンヌでも、それらはいかんなく発揮されていた。更に“しなやかさ”などという生易しい言葉では追いつかない、ハートと筋肉のうねりをみせてくれた。

 演出家が“言葉のボクシング”と提示したリングの上で、肉体と魂を駆使して戦うジャンヌはそのまま、女優・松たか子の在り方に重なる。それは、現代性とリアリティをもって、この芝居を観客に届けることができた、大きな要因だったと思う。

 つづく『ロマンス』での彼女は、チェーホフの優しく愛らしい妹マリヤである。献身的に兄に尽くすマリヤの姿は、健気(けなげ)でいじらしい。松たか子さんの真摯(しんし)で繊細な演技が、その美しい歌唱とともに胸を打つ。

 “タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格がない”とフィリップ・マーロウは言ったが、まさしく“(女優は)タフでなければ演じていけない。優しくなければ演じる資格がない”のだろう。

 松たか子の話 大変光栄に思います。今この瞬間からまた気を引き締め、芝居に対して謙虚に、そして最大限の集中力をもって臨んでいきます。

 【まつ・たかこ】 歌舞伎俳優・松本幸四郎の二女。16歳の時、歌舞伎座で初舞台を踏む。舞台、テレビドラマ、映画のほか、歌手としても活躍する。30歳。