第11回(2017年)よみうり子育て応援団大賞 受賞団体紹介

  •  第11回よみうり子育て応援団大賞の受賞団体が決まりました。
  •  大賞、奨励賞の受賞団体などをご紹介します。

大賞

「NPO法人 しぶたね」(大阪府大東市) 

 病院の廊下に置かれたベンチに1人で座る子どもがいる。小児がんや心臓病といった重い病気で入院している児童のきょうだいだ。
 入院中の病児を感染症から守るため、きょうだいの面会に年齢制限を設ける病院は多い。学校などで感染症にかかっている可能性があるからだ。親と共に訪れても病棟に入れず、何時間も待つこともある。大阪市立総合医療センターの小児病棟の前には、そんなきょうだいのためのスペースがある。理事長の清田悠代(ひさよ)さん(41)らが声をかけ、一緒に工作やままごとをして遊ぶ。硬い表情だった子が、笑顔をみせるようになる。
 清田さんは2003年、仲間2人ときょうだい支援の活動を始めた。「しぶたね」の名には、シブリング(英語できょうだいの意味)を支える種をまこう、という思いを込めた。
 難病の子どもは全国に約20万人いるとされる。親はその子のケアに精一杯となり、きょうだいは孤立感や不安を抱きがちだ。心身に不調が出たり、不登校になったりすることもあり、「周囲のサポートで心の傷を予防できうると知って」という。
 中学1年の時、4歳下の弟の心臓病がわかった。以来、弟を支えることが家族の最優先事項になった。清田さんも親に甘えたり頼ったりすることをやめた。
 だが弟が17歳で亡くなると生きる目標を失い、大学にも行けなくなった。そんな時、パソコンで海外のきょうだい支援サイトを見つけ、英語で現状を書き込んだ。「大丈夫 ?」と世界中からメールが届いた。
 「1人じゃない」と感じ、そして中学生の頃に病院で見た女の子を思い出した。まだ2歳くらいだったが、1人きりで廊下に残され、「ママー」と泣いていたのだ。「あの子のためにできることがあるかもしれない」
 大学に戻って社会福祉を学び、団体を結成。きょうだいが主役になって遊べるイベントを始めた。06年からは理解を示してくれた大阪市立総合医療センターで月2回、活動を続け、延べ約900人と関わった。
 現在、会社員や学生ら約50人が参加。幼い頃に兄を病気で亡くした大阪府内の女性(46)は、往復4時間かけて通う。昨年からは、全国で支援者を養成する研修を開いている。
 親を支える取り組みも行う。病児のきょうだいに十分に関われないことに悩む親も多い。そこで11年に親ときょうだいが互いへの思いなどを書き込める小冊子を作成。保健所や病院で無料配布し、好評だ。
 「健康な子に支援がいるの?」とよく聞かれてきただけに、「取り組みに光を当ててもらい、本当にうれしい」と受賞を喜ぶ。賞金で、米国の先駆者を日本に招き、講演会を開く予定にしている。より広く、支援の種をまいていくつもりだ。

奨励賞

「夢★らくざプロジェクト」(東京都品川区) 

 「両手でしっかりレンチを握って」「タイヤの下に手を入れちゃ危ないよ」
 東京都江東区の自動車販売会社で、小学生が整備士の仕事を体験するイベントが開かれた。12人が参加し、小学2年の男児(7)は「将来、整備士さんになりたい 」と笑顔だった。
 子どもに様々な仕事に触れてもらう活動を、2011年から続けている。代表の高田亮さん(43)は広告会社に勤めていた頃、フリーのカメラマンやコピーライターなど多様な職種の人たちと出会った。やりがいを持ち、いきいきと働いている姿が印象に残った。
 「子どもの時にいろんな職業を知っていれば、将来の選択肢が増えるのでは」と感じた。元々、社会貢献に関わりたいと思っていたこともあり、会社を退職。大学院で学んだ後、活動を始めた。
 アパレルメーカーや農家などを訪問して仕事を体験するイベント「おしごと弟子入り道場」を年に約10回開催。また、都内ホールなどを会場に、約15種類の職業を体験できる「おしごとなりきり道場」を年3回開く。参加した子どもは延べ1万人を超える。
 高田さんは「受賞を励みに協力企業や団体を増やし、子どもの未来を広げる手助けをしたい」と意気込む。

「延岡男星保育士団」(宮崎県延岡市) 

 「俺たち、延岡男星保育士団!」。午後8時過ぎ、保育施設の一室で、20~30歳代の男性保育士13人が全員で声を合わせ、ポーズを決めた。近く行われるイベントに向けた練習だ。
 子どもと遊びたいと思っても接し方がわからず、戸惑う父親は多い。同性の専門職として父親の育児を応援しようと、2014年4月に宮崎県延岡市内の保育園に勤務する男性保育士らで結成。市内のこども園で副園長を務める国友弾(くにともだん)さん(38)を中心に14人で活動する。
 休日にメンバーが交代で地域の子育てイベントなどに出演し、ダイナミックな動きのダンスや体操を教えている。年に4回開いている主催イベントは、父と子で楽しむことができ、毎回100人以上が来場する人気ぶりだ。
 一方、保育の現場に男性はまだ少ない。職場に同性の同僚がおらず、孤立しがちになる現状もある。「団の活動を通じて、横の関係ができ、保育士としてのスキルアップにもつながる。一石二鳥の活動です」と国友さん。
 「お父さんも子育てを楽しめる地域になるよう、これからも力を尽くしたい」と話している。

 

選考委員特別賞

  • 「セリエコーポレーション」(神奈川県横須賀市)

【選考委員長】
子安増生氏 京都大名誉教授
【選考委員】(50音順)
大日向雅美氏 恵泉女学園大学長
山縣文治氏 関西大教授
吉永みち子氏 ノンフィクション作家

◆選考委員の講評
選考委員長・子安増生さん(京都大名誉教授)
 大賞団体は、病児のきょうだいも重要な支援の対象であることを明らかにした。公認心理師法でも、支援を要する人の関係者の支援が重視されている。今後の子育て支援にとって重要な視点に立つ活動と高く評価した。

大日向雅美さん(恵泉女学園大学長)
 子育て支援が総論から各論へと入って来た印象だ。病児のきょうだいなど、これまで光が当たらなかったところにまで広がっており、今後も着実に活動してほしい。男性たちの活躍も素晴らしいと感じた。

山縣文治さん(関西大教授)
 奨励賞は2団体ともユニーク。地域活動にもウェートを置いた男性保育士の取り組みや、バリエーション豊かな子どもの職業体験は、それぞれ地域からの支持も厚い。これからの活動にさらに期待したい。

吉永みち子(ノンフィクション作家)
 選考委員特別賞を受けた団体は、子どもの頃に適切な支援を受けられなかったであろう青少年らを支えようと取り組んでいる。18歳を過ぎた人も対象にするなど、子育て支援を改めて考えるきっかけとなった。

  • (2017年10月30日 読売新聞)

主催:
読売新聞社