第12回(2018年)よみうり子育て応援団大賞 受賞団体紹介

  •  第12回よみうり子育て応援団大賞の受賞団体が決まりました。
  •  大賞、奨励賞の受賞団体などをご紹介します。

大賞

岐阜キッズな(絆)支援室(岐阜市) 

 「おはよう。よう来たねー」。岐阜市中心部の寺で毎週土曜に開く「てらこや無償塾」。代表で元特別支援学校教員の若岡ます美さん(55)が、境内に”登校”する小中学生や高校生を笑顔で出迎える。子どもたちの表情が、ふっと和らぐ。
 2012年6月に結成し、無料の学習支援に取り組んできた。対象は、東日本大震災の影響で岐阜県内に避難していたり、経済的な理由などで学習環境が十分でなかったりする子どもたち。本堂などで問題集や参考書に向かい、隣に座る指導スタッフがサポートする。中学生の一人は「わからないところはすぐに聞けるし、友達もそばにいて楽しい」と話す。
 きっかけは、東日本大震災の被災地に物資や寄付金を送る活動をしていた若岡さんが企画した、県内への避難者と地域住民らとの交流会。避難してきた子どもたちが一様に下を向き、不安そうにしている姿が胸に刺さった。
 「安心して遊び、学べる居場所が必要だ」。教員時代の仲間や近隣の大学生らに声を掛け、ボランティアを集めた。学習が困難な子らにも門戸を広げ、現在は児童・生徒約30人をほぼマンツーマンで見守る。
 昼になると、団体に寄付された食材を使い、みんなでみそ汁や野菜いためなどのおかずを作って食卓を囲む。「きょうもいっぱい食べるぞ!」。無邪気な言葉に笑いが広がる。調理の経験や食事のマナーを学んでもらう狙いもあり、「だんらんの時間を楽しみながら、生きる力を身につけてほしい」と若岡さんは願う。
 保護者の生活相談にも応じる。支援が受けられそうなケースがあれば行政窓口や関係機関を紹介し、生活用品が不足して困っている家庭には、寄贈品から提供することもある。手探りで始めた学習支援活動は各地に波及し、県内10団体とネットワーク組織を設立して支援拡充を図る。
 無償塾から希望の高校に合格し、大学受験を考える生徒も出てきた。今年から奨学金制度も設けた。「活動を通じて、子どもたちが将来の夢を語れるようになった。夢の実現を後押しし、社会人として自立するまで応援を続けていきたい」。スタッフ全員、思いを新たにしている。

奨励賞

ミマモcafe(東京都新宿区)

 東京都新宿区の大規模マンション内のキッズルームに、乳幼児の笑い声が響く。「ミマモcafe」が週2回開く子育て広場。ぬいぐるみや積み木などを持って遊び相手になるのは、スタッフやシニアボランティアらだ。公園や児童館では子どもから目が離せず、母親は周囲と交流できないことが多いが、ここでは子どもから少しだけ距離を置き、おしゃべりを楽しめる。
 地域には結婚や夫の転勤で転居してきた女性が多く、出産を機に仕事を辞めた人も目立つ。広場は2011年、知り合いがなく孤立しがちな母親を結びつけ、情報交換や息抜きの場を持とうと、子育てママ自身が集まって始めた。
 「『あったらいいな』と思う場所をつくってきた」と設立メンバーの鶴巻祐子さん(43)。利用者が特技や資格を生かし、手芸や小児救命救急などを教える講座も開催し、「役に立ててうれしい」「自分に自信が持てた」といった声も聞かれる。鶴巻さんは「これからもママが生き生きと過ごせる環境を大切にしていきたい」と意気込む。

奨励賞

NPO法人芸術家と子どもたち(東京都豊島区)

 「渡り鳥になってみよう」「流木はどんな感じ?」。東京都葛飾区立柴原小であった「創作ダンス」の授業で、6年生41人が、振付家でダンサーの村本すみれさんのかけ声に反応して、思い思いに体を動かした。最初はぎこちなかったが、徐々に身ぶりが大きくなり、最後は笑顔がはじけた。
 理事長の堤康彦さん(53)が「芸術に触れる楽しさを子どもたちに伝えたい」と、1999年に活動を始めた。プロのダンサーや俳優を都内の幼稚園や保育園、小中学校などに派遣し、ダンスや演劇の体験を通じて子どもの創造性や個性を引き出す。
 2011年からは児童養護施設にも出向く。「特別支援学級に通う子たちが、生き生きした表情で演じる姿を見たのがきっかけ」と事務局の中西麻友さん(37)。 施設で暮らす支援学級の児童・生徒が少なくないことを知り、困難な成育環境だったとしても「自分を表現することで自己肯定感を高め、前向きに生きていく一助になれば」との思いを強めた。
 施設の子どもと信頼関係を築くには、継続的に教室を開催する体制づくりや、芸術家と意思を共有することなどが必要となる。中西さんらは、受賞後の専門家のアドバイスを心待ちにしている。

選考委員特別賞

NPO法人ゆめ・まち・ねっと(静岡県富士市)

 2004年、子どもたちが木登りや川遊びなどを体験する「冒険遊び場」の運営を始めたのが活動の原点。その後、家庭などに問題を抱える児童・生徒が放課後に立ち寄れる居場所づくり、進学を目指す子どもへの無料学習支援などに取り組んできた。
 代表の渡部達也さん(53)は、児童相談所勤務の経験がある元県職員。児相に委ねる前に地域でできることはないか、模索を続ける。目指すのは温かく、息の長い関係性の構築。「他人との触れ合い、何気ない日常。それを重ねていく先に希望があると信じて、これからも地道に子どもたちと向き合っていきたい」と意欲を見せる。

 

選考委員特別賞

NPO法人ウイズアイ(東京都清瀬市)

 新生児訪問指導を行っていた助産師と保健師計3人が、不安を抱えながら子育てをしている母親たちを応援したいと、1995年にボランティアで活動を始めた。「産後うつ」の予防事業「新米ママと赤ちゃんの会」を軸に、母親同士の交流の場となる「つどいのひろば」、育児相談や保育事業、ベビーマッサージなどの父親向けイベントの開催など幅広く企画してきた。
 利用者が後に、スタッフとして支援する側に回るケースが多いのも強みだ。発足当初から関わる理事の増田恵美子さん(59)は「『利用者目線』を心がけてきた。これからも活動の輪をさらに広げていきたい」と受賞を喜ぶ。

【選考委員長】
子安増生氏 京都大名誉教授
【選考委員】(50音順)
大日向雅美氏 恵泉女学園大学長
山縣文治氏 関西大教授
吉永みち子氏 ノンフィクション作家

◆選考委員の講評
選考委員長・子安増生さん(京都大名誉教授)
 子どもの貧困は学力面だけでなく、将来の社会を築く上でも大きな問題だ。今回の応募団体も多くがこのテーマを扱っていた。国として取り組むべき課題だが、地域が子どもを支えていくのも大事。それが大賞という形で表れたのは、非常に意義がある。

大日向雅美さん(恵泉女学園大学長)
 「子育て支援」という言葉が一般的ではなかった第1回から12年目を迎え、次のステージに向けた新たな芽吹きが感じられた。大賞は比較的小さな団体で、それだけに支えられる側の弱さにいっそうの共感、一体感を持った支援のあり方に魅力がある。

山縣文治さん(関西大教授)
 奨励賞受賞団体の一つは、子ども自身の主体性を生かし、直接向き合うことで子どもの力を高めていく「子育ち」応援の色合いが濃い。もう一方の団体は、都市型の高層マンションの中で子育て世代が互いに支え合っており、時代を映していると感じた。

吉永みち子(ノンフィクション作家)
 選考委員特別賞は、長年、母親に寄り添う取り組みを積み重ねた団体と、種をまけば誰かが芽吹かせてくれるだろうという、私たちの考える「持続性」を超えた発想で活動する団体が受賞した。子育て支援のあり方が重層的に広がっていることを実感した。

  • (2018年10月28日 読売新聞)

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読売新聞社