第43回医療功労賞 全国表彰者の横顔

 「第43回医療功労賞」の全国表彰者11人が決まった。受賞者の内訳は国内部門9人、海外部門2人。11人の横顔を紹介する(敬称略)。

国内部門

看護師の勉強会 知識底上げ

  • 須藤ツルノ(73) 看護師


  •  37年以上にわたり、看護現場に身を置いて患者を支える傍ら、勉強会を作って職場内の知識の底上げを図ってきた。

  •  2012年に認知症ケアの研究会を設立し、症例対応の研究や関係施設間の情報共有を進めた。看護・介護職員の技術向上につながり、地元の受け入れ態勢の充実に寄与した。同僚と協力し、青森市内の婦人会や老人クラブで健康教室を開催するなど、住民の啓発にも心を砕いている。<青森市>


糖尿病による失明 支援と予防

  • 山田幸男(73) 医師

 1979年、大学病院を辞め、新潟市内の病院に糖尿病の医師として赴任した。糖尿病で失明した人が社会復帰するための支援や、予防に向けた啓発活動に取り組んでいる。94年には、病院内に全国的にも珍しいリハビリ外来を開設。失明者らを対象に歩き方やパソコン操作の指導にあたり、これまで約800人が利用した。2005年からは新潟県保健衛生センターでも診察を始め、予防教室を開くなど精力的に活動している。<新潟市>


保健師46年 障害者作業所開く

  • 井澤朋子(68) 保健師

 地域の精神保健活動の推進や母子保健対策の充実に尽力してきた。活動期間は46年に及ぶ。

 保健所に勤めていた時、管内に精神障害者の作業所を設置することを思い立った。関係各所に働きかけ、2年がかりで実現させた。母子保健対策では、当時珍しかったフッ素塗布による虫歯予防に取り組んだり、県内初の不妊相談支援センター設立に携わったりした。現在は、難病患者やその家族の相談業務に力を注いでいる。<富山市>


患者情報 病院・施設・行政が共有

  • 赤木重典(62) 医師

 過疎・高齢化が進む京都・丹後地方で、35年間にわたり、地域医療の発展に貢献してきた。1987年、現・京丹後市立久美浜病院に赴任。同市に合併する前の旧久美浜町で初の定期的な乳がん検診を行うなど、先駆的な取り組みを続けてきた。2011年からは病院長を務める。病院、福祉施設、行政機関が一体となって患者の情報を共有するネットワーク「地域包括医療・ケアシステム」の構築を提唱し、実現に奔走した。<京都府京丹後市>


小豆島 自宅での「みとり」応援

  • 三宅賢一(64) 医師

 瀬戸内海の小豆島で在宅医療の充実に尽力してきた。1979年、岡山大病院を辞め、医療機関の少ない同島にある土庄中央病院に赴任。2003年から院長を務めている。

 お年寄りが安心して暮らせるようにと、91年に訪問看護を始めた。ケアマネジャーやヘルパーとも連携することで、対象患者を自宅でみとる割合が大幅に上昇。「自宅で最期を迎えたい」という人のニーズに応えてきた。<香川県土庄町>


精神疾患患者 病院から地域へ

  • 大賀章子(63) 保健師

 精神疾患を抱える人を対象に、社会復帰を支援する業務に携わってきた。1996年に香川県内の保健所で担当したのがきっかけ。2001年には精神保健福祉士の資格を取り、県立丸亀病院で訪問看護を始めた。症状の経過を継続的に観察することで再発防止を図るという先駆的な取り組みを行った。06年から定年までの6年間は、県の保健福祉事務所に勤め、長期入院患者の生活の場を、病院から地域に移すことに力を入れた。<高松市>


長崎・対馬 新病院開設に奔走

  • 糸瀬薫(60) 医師

 出身地の長崎・対馬で35年以上、地元住民の健康管理や病院経営の改善に尽力してきた。

 2003年、対馬にある中対馬病院の院長に就任し、常勤医の確保に奔走した。08年には対馬いづはら病院長を務め、診察業務の傍ら、両病院の統合を主導。今年5月に予定される新病院開設にこぎ着けた。島内の他の医療機関に出向いて診療応援も行うなど、離島で医療現場の第一線に立ち続けている。<長崎県対馬市>


宮崎で訪問リハビリ 離島へも

  • 福嶋照夫(56) 理学療法士

 30年間にわたり、高齢化率が高い宮崎県南部で、リハビリ治療の普及に努めてきた。1986年、日南市の医療機関で、当時はまだ浸透していなかった訪問リハビリをスタートさせた。翌87年には、漁船で離島に渡って行う姿がテレビ番組で取り上げられ、訪問リハビリが注目を浴びるきっかけを作った。今は、治療の対象を広げ、スポーツ選手の体調管理にあたる「メディカルサポート」にも取り組んでいる。<宮崎県日南市>


ハンセン病患者の歯科診療

  • 金城文信(75) 歯科医師

 1966年、沖縄県名護市のハンセン病療養所「沖縄愛楽園」に赴任し、約3年半、ハンセン病患者の歯科診療にあたった。

 69年に同市内で歯科医院を開業し、地元の子供を中心に歯科衛生の向上に努めてきた。複数校の歯科校医を掛け持ちで務め、歯磨きの仕方をきめ細かに指導。教職員や保護者とも連携を図り、歯磨きを行う適切な時間帯や、年齢に応じた歯ブラシの選択などを子供に周知徹底させた。<沖縄県名護市>


海外部門

ザンビア 無償で巡回診療

  • 山元香代子(59) 医師

 アフリカ南部のザンビアで、2011年から巡回診療を続けている。05年から2年間、国際協力機構(JICA)の専門家として同国に赴任したことが契機となった。首都ルサカから車で5時間の辺地に出向き、マラリア患者らに薬を渡すなどして対応するが、すべて無償だ。年間約700万円の活動資金の多くは自費でまかなう。ザンビアと日本を3か月交代で行き来する生活を送り、国内での診療を通じて得た報酬を充てている。<ザンビアほか>


母子手帳 アジアなどで普及

  • 中村安秀(63) 医師

 日本が創設した「母子健康手帳制度」を海外に広めた第一人者。乳幼児や妊産婦の死亡率が高いアジアやアフリカを中心に普及活動に取り組んできた。

 1986年、国際協力機構(JICA)の専門家として、インドネシア北スマトラ州に赴任。母子手帳の現地版を作成し、2004年には同国全土で導入されるに至った。各国が母子手帳の現状を話し合う「母子手帳国際会議」の開催も手がけてきた。<インドネシアほか>

(2015年3月14日 読売新聞)