第16回(2015年度)読売・吉野作造賞福永文夫氏「日本占領史1945―1952」 木村幹氏「日韓歴史認識問題とは何か」

第16回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、独協大学教授・福永文夫氏の著書「日本占領史 1945―1952」(中央公論新社)と、神戸大学教授・木村幹氏の著書「日韓歴史認識問題とは何か」(ミネルヴァ書房)の2作に決まりました。それぞれ正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

同賞は昨年中に発表された著作、雑誌論文を対象とし、選考委員会の厳正な審議により決定しました。福永氏の作品は、戦後占領期の日本の歩みを重層的に描き出した論考です。また、木村氏の作品は、日韓両国において歴史認識問題が顕在化してきた過程を分析しています。贈賞式は7月14日、東京・帝国ホテルで行います。

写真:福永文夫氏
福永文夫(ふくなが・ふみお)氏
1953年兵庫県生まれ。独協大学教授。神戸大学卒業後、姫路独協大学教授などを経て現職。専攻は日本政治外交史。
写真:木村幹氏
木村幹(きむら・かん)氏
1966年大阪府生まれ。神戸大学教授。京都大学卒業後、愛媛大学講師などを経て現職。専攻は朝鮮半島地域研究。

選評:戦後70年 丹念な分析

今年は選考委員が共に高い評価を与えた2編が受賞作となった。

福永文夫氏「日本占領史 1945―1952」は、GHQによる日本占領期のさまざまな重要政策課題を、経年的に描き上げた力量が高く評価された。長年の地道な研究成果が、バランスよく明晰(めいせき)な文章で語られている。こうした大テーマは、概して平板な記述に終わることが多いが、著者は、占領側の統治構造、日本の政治集団の動向を巧みに絡ませながら、立体的に日本占領の実態をまとめることに成功している。「持続と蓄積」の精神の賜物(たまもの)であろう。

同様の研究姿勢は木村幹氏「日韓歴史認識問題とは何か」にも共通している。日韓関係への短絡的・感情的な反応を避け、粘り強く、「歴史認識問題」の新聞報道にあらわれる語彙(ごい)、日韓両国それぞれの論争当事者の特性を丹念に分析。国際環境の変化と論者の世代交代によって、日韓両国のエリートがコントロールする時代から、一般世論が直接ぶつかりあう時代へと移行したことを鮮やかに示している。

両書とも、戦後70年にあたって、現在日本が直面する政治課題を歴史的・総体的に理解するための必読の書と言える。(猪木武徳)

(2015年06月09日 読売新聞)