第12回(2011年度)読売・吉野作造賞上山隆大氏「アカデミック・キャピタリズムを超えて――アメリカの大学と科学研究の現在」

第12回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、上智大学教授・上山隆大氏の著書「アカデミック・キャピタリズムを超えて――アメリカの大学と科学研究の現在」(NTT出版)に決まりました。正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

同賞は2010年4月から2011年3月までに発表された単行本、雑誌論文を対象とし、選考委員会の厳正な審議により決定しました。上山氏の受賞作は、アメリカの大学で進む「研究の市場化と大学の商業化」について考察した力作です。

贈賞式は7月14日午後6時から、東京・内幸町の日本記者クラブで行います。

写真:上山隆大氏
上山隆大(うえやま・たかひろ)氏
1958年大阪生まれ。上智大学経済学部教授。大阪大学大学院経済学研究科、スタンフォード大学歴史学部大学院の各博士課程を修了。専攻は経済史、科学技術史、科学技術政策。

選評:「企業と大学」実証的に考察

学問研究はときに政治権力や経済的利益の影響下にさらされる。とくに科学研究の場合この傾向は著しい。金銭的、個人的な事情が、研究結果を報告する際の専門的判断を危うくする状況は意外と多く存在するからだ。中国でも、私立大学が数多く誕生しているだけでなく、国立大学も企業経営に乗り出し、そこからの利益で大学予算のかなりの部分を賄っている。世界の大学の研究体制が急速に変貌を遂げつつある現在、企業と大学の関係をめぐる論議は日本でも避けて通ることはできない。

上山氏の研究は、公に開かれているべき科学研究の領域に私的財産権が侵入してくる現象を取り上げ、米国の実情を丁寧に調べ、そこで観察される問題点を根本的に問い直している。先行研究の渉猟だけでなく、一次資料、米国の研究者へのインタビュー、ケーススタディーなど、その手法には実証研究の王道を行く確かさがある。本書は、企業化する大学の科学研究の是非を考える際の信頼しうる材料と重要な手がかりを与えてくれる。

こうしたカレントな問題に、自由と公正の視点から着実に迫っている点で、本書は読売・吉野作造賞にまことにふさわしい作品と言えよう。(選考委員会座長・猪木武徳)

(2011年06月10日 読売新聞)