第11回(2010年度)読売・吉野作造賞細谷雄一氏「倫理的な戦争――トニー・ブレアの栄光と挫折」

第11回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、慶応義塾大学准教授・細谷雄一氏の著書「倫理的な戦争――トニー・ブレアの栄光と挫折」(慶応義塾大学出版会刊)に決まりました。正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

同賞は昨年4月から今年3月までに発表された単行本、雑誌論文を対象とし、選考委員会の厳正な審議により決定しました。細谷氏の受賞作は、イラク戦争前後の英国・ブレア首相の外交戦略を考察しながら、世界秩序のあり方を問う力作です。贈賞式は7月13日午後6時から、東京・内幸町の日本記者クラブで行われました。

写真:細谷雄一氏
細谷雄一(ほそや・ゆういち)氏
1971年、千葉県生まれ。慶応義塾大学法学部准教授。2000年同大学大学院法学研究科修了。専攻はヨーロッパ外交史、国際政治学。著書に「戦後国際秩序とイギリス外交」「外交による平和」「外交」など。

選評:世界秩序のゆくえ問う力作

「読売・吉野作造賞」は過去1年間に政治・経済・社会・歴史などの広い分野の中で最も優れた論作に与えられる伝統ある賞である。細谷氏の「倫理的な戦争」は、ヨーロッパとアメリカの橋渡しをしながら、「国際コミュニティ」の結束をめざしたトニー・ブレア外交の「栄光と挫折」の軌跡をたどりつつ、21世紀の世界秩序のゆくえを問う力作である。

そこで提起されている基本的テーマは「倫理的戦争はありうるのか」「戦争によって正義は実現できるのか」であるが、そもそも人命の殺傷や自然環境の破壊を伴う戦争にそうした期待をもつこと自体が無理なのか。著者はブレア氏の外交理念と政策展開を検証しながら、その問題を描いている。

われわれはいつも戦争あるいはその可能性に直面している。倫理的目的を掲げてそれがどこまで容認されるのか。21世紀の国際秩序を考える上で問題提起の豊かな力作である。(選考委員会座長・宮崎勇)

(2010年06月10日 読売新聞)