第10回(2009年度)読売・吉野作造賞小池和男氏「日本産業社会の『神話』」

第10回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、法政大学名誉教授・小池和男氏の著書『日本産業社会の「神話」』(日本経済新聞出版社刊)に決まりました。正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

同賞は2008年4月から09年3月までに発表された単行本、雑誌論文を対象とし、選考委員会の厳正な審議により決定しました。小池氏の受賞作は、「日本は集団主義の国」「日本人は会社人間」などの通念は誤解であることを実証的に分析、日本産業社会の衰退を防ぐには何が重要かを論じた労作です。贈賞式は7月14日午後6時から、東京・内幸町の日本記者クラブで行います。

写真:小池和男氏
小池和男(こいけ・かずお)氏
1932年、新潟市生まれ。法政大学名誉教授。55年東京大学教養学部卒業。60年同大学院経済学研究科博士課程修了。名古屋大学教授、京都大学経済研究所所長、法政大学教授などを歴任。専攻は労働経済学。著書に『仕事の経済学』『海外日本企業の人材形成』など。

選評:「衰退」防ぐ道主張明快に

読売・吉野作造賞の選考に際して成文化された基準はないが、私は読売新聞の信条(責任ある自由、人間主義、国際主義)と吉野博士の理念(民本主義、新自由主義、善隣友好)を体した政策提言的なものと考えている。

受賞作『日本産業社会の「神話」』の著者・小池氏は、「日本は集団主義の国」「日本人は会社人間」といった幾つかの通念は国際比較によっても誤っているとし、そうした「神話」を打ち破らないと日本は衰退すると警告している。相手国と同じような深さ、同じような方法で問題を比較してこそ「神話」から自由になる、と主張する。

「経済自虐史観をただす」という副題はややわかりにくい言葉だが「彼を知り、己を知って」誤解を正し、日本の産業社会の衰退を防ごうという著者の主張は明快、実証的である。国際化が進む中で日本産業社会に関心を持つ人々に、ぜひ一読を薦めたい。(選考委員会座長・宮崎勇)

(2009年06月10日 読売新聞)