第9回(2008年度)読売・吉野作造賞飯尾潤氏「日本の統治構造」

第9回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、政策研究大学院大学教授・飯尾潤氏の著書『日本の統治構造』(中公新書、中央公論新社刊)に決まりました。正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

同賞は2007年4月から2008年3月までに発表された単行本、雑誌論文を対象とし、選考委員会の厳正な審議により決定しました。飯尾氏の受賞作は、これまでの「官僚内閣制」から本来の議院内閣制への転換を訴え、日本の統治構造を憲法に照らして歴史的、国際的な観点から多角的に分析した力作です。

選考委員は、座長・宮崎勇(経済評論家)、三浦朱門(作家)、山崎正和(劇作家)、猪木武徳(国際日本文化研究センター所長)、山内昌之(東京大学教授)、北岡伸一(東京大学教授)、老川祥一(読売新聞東京本社社長・編集主幹)の7氏。

写真:飯尾潤氏
飯尾潤(いいお・じゅん)氏
1962年、神戸市生まれ。政策研究大学院大学教授。86年東京大学法学部卒業。92年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。埼玉大学大学院政策科学研究科助教授などを経て2000年から現職。専攻は政治学、現代日本政治論。著書に『民営化の政治過程』(東京大学出版会)、『政局から政策へ』(NTT出版)など。

選評:「官僚内閣」の転換 強調

読売・吉野作造賞は、過去1年間で政治・経済・社会・歴史など、広い分野の最も優れた論作に与えられる。選考に際して成文化された基準はないが、私は読売新聞の信条(責任ある自由、人間主義、国際主義)と吉野博士の理念(民本主義、新自由主義、善隣友好)を体した政策提言的なものと考えている。

今年度の受賞が決まった飯尾潤氏の『日本の統治構造』は、「国会は国権の最高機関」であり「国会議員は国民の負託によって国政を代行する国民の代表者である」とする憲法に照らして、日本の統治機構を歴史的国際的に分析した力作である。

とり上げられた問題は内閣、与党、政権交代など広範に及んでいるが、その核心は、日本の統治機構の実体は憲法の意に反して、政党政治家を内閣の主体と考えず「省庁の代表者」が集まった「官僚内閣制」が継がれてきた。これを普遍的な「議院内閣制」に転換すべきだと強調した点にある。時宜を得た力作で、受賞作として推薦するとともに、国民に広く読まれることを期待したい。(選考委員会座長・宮崎勇)

(2008年06月10日 読売新聞)