第8回(2007年度)読売・吉野作造賞山本吉宣氏「『帝国』の国際政治学――冷戦後の国際システムとアメリカ」

第8回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、青山学院大学国際政治経済学部教授・山本吉宣氏の著書『「帝国」の国際政治学――冷戦後の国際システムとアメリカ』(東信堂刊)に決まりました。正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

同賞は、読売論壇賞と中央公論新社の吉野作造賞を一本化して2000年に創設されました。今回は昨年4月から今年3月までに発表された単行本、雑誌論文を対象とし、選考委員会の厳正な審議により決定しました。山本氏の受賞作は、冷戦後のアメリカを「帝国」、世界全体を「帝国システム」とみなし、アメリカの世界統御の構造を体系的に実証する研究書。豊富な資料に基づき「アメリカ帝国」をめぐる国際関係の実態を詳細に分析しています。

選考委員は、座長・宮崎勇(経済評論家)、三浦朱門(作家)、山崎正和(劇作家)、猪木武徳(国際日本文化研究センター教授)、山内昌之(東京大学教授)、北岡伸一(東京大学教授)、滝鼻卓雄(読売新聞東京本社社長・編集主幹)の7氏。

写真:山本吉宣氏
山本吉宣(やまもと・よしのぶ)氏
1943年、神奈川県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部教授。66年東京大学教養学部教養学科卒業。米国ミシガン大学で博士号取得。埼玉大学教授、東京大学教授などを経て、2004年から現職。専攻は国際政治学、国際政治理論、アメリカの対外政策。著書に『国際的相互依存』(東京大学出版会)、『総合安保と未来の選択』(衛藤瀋吉氏との共著、講談社)など。

選評:「アメリカと世界」語る力作

受賞作の山本吉宣氏『「帝国」の国際政治学――冷戦後の国際システムとアメリカ』は、冷戦後今日に至るまで単極構造の頂点に立ったアメリカの国際政治(学)の展開を史実と記録に基づいて体系的に考察し、アメリカを「帝国」としてみるとともに、そのアメリカが国際政治上の「地球的国際的システム」をいかに統御し、かつこれからも統御しようとしているかを分析している。きわめて論争的な「帝国」という概念を駆使して「アメリカと世界」を語っている力作である。

最近、エコノミストの一部で「地球帝国」という言葉が使われている。それによれば今の世界経済は「単一の経済再生産モデルであり、世界総体を完成したモデルと考え、所得・分配・資本形成の再生産モデルのシステムだ」という。山本教授の「世界帝国システム」はそれよりもっと広い政治を含む「単一世界」のシステムであり、アメリカ「帝国」は経済力のみならず、広く外交力、軍事力さらには伝道師的なアメリカ的価値観の普遍化力を駆使して、世界システムを統御しようとするものだ、という。

日米同盟に依存しながら国際化(地球帝国のシステムの中での共生)を進めようという日本の針路決定にあたり、関係者の発言とデータを、誠実かつ地道に積みあげたこの受賞作は、やや学術論文的ではあるが関係者にとって必読の好著である。(選考委員会座長・宮崎勇)

(2007年06月08日 読売新聞)