第6回(2005年度)読売・吉野作造賞阿川尚之氏「憲法で読むアメリカ史」

第6回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、慶応義塾大学総合政策学部教授・阿川尚之氏の著書『憲法で読むアメリカ史』(PHP新書、PHP研究所刊)に決まりました。正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

同賞は、読売論壇賞と中央公論新社の吉野作造賞を一本化して2000年に創設されました。今回は昨年4月から今年3月までに発表された単行本、雑誌論文を対象とし、選考委員会の厳正な審議により決定しました。阿川氏の受賞作は、自主独立の精神を今なお堅持しているアメリカ合衆国憲法が、時代の要請に対していかに解釈・修正されてきたのかを、奴隷制度をめぐる南北の対立や2度の世界大戦、冷戦下での言論の自由など、具体的なアメリカの歴史に即して解き明かした評論集です。

選考委員は、座長・宮崎勇(大和総研名誉顧問)、三浦朱門(作家)、木村尚三郎(東京大学名誉教授)、山崎正和(劇作家)、猪木武徳(国際日本文化研究センター教授)、北岡伸一(国連大使)=欠席、書面にて参加、滝鼻卓雄(読売新聞東京本社社長・編集主幹)の各氏。

写真:阿川尚之氏
阿川尚之(あがわ・なおゆき)氏
1951年東京都生まれ。慶応義塾大学総合政策学部教授(東京大学特任教授併任)。慶応義塾大学法学部政治学科中退。米国ジョージタウン大学スクール・オブ・フォーリン・サービス、ならびにロースクール卒業。ソニー、米国法律事務所などを経て1999年から現職(2002年8月から2005年4月まで在米日本国大使館公使)。専攻はアメリカ憲法史、日米関係。著書に『アメリカン・ロイヤーの誕生』『海の友情』『アメリカが嫌いですか』『アメリカが見つかりましたか』『それでも私は親米を貫く』など。

選評:「国づくり」を教える力作

第6回「読売・吉野作造賞」に阿川尚之氏の『憲法で読むアメリカ史』が決定した。

「読売・吉野作造賞」は過去1年間に政治・経済・社会・歴史などの広い分野で最も優れた論作に与えられる伝統ある賞である。成文化された選考基準はないが、読売新聞の信条である「責任ある自由、人間主義、国際主義」と、吉野博士の理念「民本主義、新しい自由主義、善隣友好」が実質的な基準であり、私個人はそれに「政策提案的なもの。そして品位ある文章」を加えている。

阿川氏の『憲法で読むアメリカ史』は、アメリカの国柄を表す最高法規・合衆国憲法が「現代アメリカの国のかたち」をいかに形成してきたかを論じている。法制の技術論ではなくて、時代の要請に応じていかに運用されてきたかを、連邦と州との権限争い、奴隷制度をめぐる南北の対立、2度の世界大戦とそれに続く冷戦時代と、合衆国最高裁判所の活動を中心に描いている。

私はとくに人種差別の撤廃と言論の自由の確保について、時には政党の駆け引きの材料にされながらも、政党、政府そして国民の間で払われた憲法を大事にする努力に感心させられた。合衆国憲法の立場から国連憲章がどう考えられているか、太平洋戦争後の日本国憲法をどう見ているかにも触れて欲しかったが、それはともかく「国をつくっていく」のに何が大事かを教えてくれる力作である。(選考委員会座長・宮崎勇)

(2005年06月10日 読売新聞)