第21回(2020年度)読売・吉野作造賞小峰隆夫氏「平成の経済」

第21回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、大正大学教授・小峰隆夫氏の著書「平成の経済」(日本経済新聞出版社)に決まりました。正賞の文箱と副賞300万円を贈ります。

同賞は昨年発表された著作、雑誌論文を対象とし、選考委員会の審議により決定しました。受賞作は、平成期の公的資金注入やデフレ対策などの諸政策を鋭く分析した意欲作です。

写真:小峰隆夫氏
小峰隆夫(こみね・たかお)氏
1947年生まれ。埼玉県出身。東京大学経済学部卒。経済企画庁物価局長、調査局長など歴任。大正大学地域構想研究所教授。専門は日本経済論。

選評:日本の経済政策 明快に評価

 本書は平成30年間の日本経済の動向と諸政策の評価を、マクロ経済学の視点から明快かつ率直に論じた上質の日本経済論だ。国民経済全体の変動を語るとき、平板さや無味乾燥さを避けることは難しい。価値判断に関わる根拠もていねいに書き込まれており、類書にない面白さがある。

 景気対策の多くは、経済を短期的に「刺激」することはあっても、長期的には経済を「まひ」させる。本書は消費税率引き上げの際の景気後退防止策や、異次元の金融緩和など、短期決戦型の政策を長く続けることの危うさを指摘する。経済政策の立案において、日本の民主政治では責任の所在が不確かではないか、国民への人気取りに終始してはいないかと本書は厳しく問うている。将来を見据えた重要な警告だ。

 平成の日本経済は内外から多くの危機に見舞われた。そのためもあって国家介入の度合いが高まったことは事実だ。本書から、巨大な国民経済を制御することの難しさを学び取ることができる。平成を振り返りながらも、著者の目はこれからの日本経済の行く末にある。この前向きの姿勢も選考委員の共感を呼んだ大きな理由であった。(選考委員 猪木武徳)

【選考委員】座長=猪木武徳・大阪大学名誉教授、山内昌之・武蔵野大学特任教授、北岡伸一・国際協力機構理事長、白石隆・熊本県立大学理事長、吉川洋・立正大学学長、老川祥一・読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆代理、東京本社・取締役論説委員長、松田陽三・中央公論新社代表取締役社長

(2020年06月10日 読売新聞)