提言報道

読売新聞は1994年(平成6年)11月に憲法改正試案を発表して以来、安全保障、行政改革、経済政策、教育、税制、医療など、国の将来像にかかわる多くのテーマについて提言を行ってきました。提言報道により、言論機関として新たな境地を開くとともに、時代の羅針盤としての役割を果たしてきたと自負しています。

提言報道の記録

読売新聞がこれまで行ってきた提言報道の実績をご紹介します。

1994年11月読売憲法改正試案

 冷戦が終結し、国際情勢が大きく変わる中、国民的な憲法論議を深めるために発表した。試案では、主権者は国民であり、国政は議会制民主主義によって運営されることを明確にするために「国民主権」の章を新設し、第1章に置くとした。安全保障政策では、「自衛のための組織」として自衛隊の存在を明確に位置づけ、「国際協力」に関する条項を新設した。

その後の動き

 衆参両院に憲法調査会を設置(2000年1月)
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1995年5月総合安全保障政策大綱

 外部からの侵略や争乱によるものだけではなく、自然災害や大規模事故、テロ・環境破壊なども含めた「脅威および災禍」に備える諸施策・国内体制の整備を提唱した。日本が個別的自衛権に加えて、安全保障上の利害を共有する同盟国と協力しながら集団的自衛権を行使できることを明確にした。

その後の動き

 在外邦人などの救出・輸送に自衛隊の艦船も使えるようにする改正自衛隊法が成立(1999年5月)
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1996年5月内閣・行政機構改革大綱

 首相がリーダーシップを発揮して政治課題に果断に対応できるよう首相権限を強化することを提唱した。閣議を名実ともに最高意思決定機関とするため、閣僚の数を大幅に削減することを求めた。当時の1府8庁12省体制を、内外の構造変動や新たな行政需要に対応するため、1府9省に統合・再編するよう提言した。

その後の動き

 中央省庁が1府12省庁に再編(2001年1月)
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1997年5月21世紀への構想――国のシステムと自治の再構築をめざして

 地域の個性ある発展と地方自治の自立・自己責任の原則を確立するため、都道府県・市町村体制を「12州・300市」に統合・再編するよう求めた。同時に、国と地方の役割分担を根本から見直すことを提唱した。外交、防衛など「国」の基本に関する統一的な政策は国が担当、「市」は医療、教育など身近な生活に関した行政を守備範囲にするとした。

その後の動き

 小泉首相が地方制度調査会に「道州制」導入などを諮問(2004年3月)
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1998年4月あすでは遅すぎる 経済危機七つの提言

 景気が冷え込む日本経済の状況は「戦後最大級の難局」であるという認識に立ち、橋本内閣に対し、政策の優先順位を変え、財政再建より景気への配慮を優先させるよう求めた。当面、柔軟な財政出動が可能になるよう、財政構造改革法に弾力条項を導入し、年度ごとの赤字国債の削減規定を停止することが必要とした。

その後の動き

 特別減税を実施するため、赤字国債を増発できるようにした財政構造改革法が成立。大規模な経済対策を実施(1998年5月)
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1998年5月政治・行政の緊急改革提言

 経済危機にイニシアチブを発揮できない政治の立て直しに向け、政治の指導性を確立するためのシステム改革を提言した。具体的には、▽内閣が国会に法案を提出する際、与党の事前承認を必要とする慣行を廃止する▽国会議員による本会議政党間討論制度を創設する――などを提唱した。

その後の動き

 綿貫衆院議長の私的諮問機関「衆院改革に関する調査会」が、法案に関する与党事前審査の廃止を求める答申を提出(2001年11月)
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1998年5月あすでは遅すぎる 税制改革への提言

 税制改革への提言では、日本経済に活力をよみがえらせるため、「恒久減税」を求めた。弱者保護に名を借りた様々なゆがみをただし、グローバル・スタンダード(世界標準)にあった税体系に改めることも大切だと訴えた。6月の政治への提言では、経済専門家を首相補佐官に起用するよう求めた。

その後の動き

 所得税・住民税や法人税の恒久減税を実施するための減税関連法が成立(1999年3月)
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1998年7月小渕新政権へ提言

 橋本首相(自民党総裁)の退陣表明に伴い、自民党は後継総裁に小渕恵三氏を選出した。新政権発足を前に、金融安定化、デフレ阻止へ政策の大転換、経済活力を引き出す税制の抜本改革など五つの政策を柱とした「100日間の緊急行動計画」を策定し、実施するよう提言した。

その後の動き

 小渕首相が就任後初の所信表明演説で、景気回復について、「一両年のうちにわが国経済を回復軌道に乗せるよう、内閣の命運をかけて全力を尽くす」と表明(1998年8月)
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1999年5月領域警備強化のための緊急提言

 1999年3月の北朝鮮工作船領海侵犯事件で、日本の領域を守るための法制度が不備であることが露呈した。提言では、自衛隊に領域警備や警戒監視の任務を与えるため自衛隊法の改正を求めた。領域警備事態で、首相が機動的に指揮できるよう内閣法を改正することを提唱した。

その後の動き

 防衛庁が不審船立ち入りのため、海上自衛隊に特別警備隊を設置(2001年3月)
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1999年5月このままでは危ない 経済再生へ五つの提言

 日本経済を自律的な回復軌道に復帰させるためには、大胆な政策を時機を失せずに打つことが必要と提唱した。金融システムを巡る不安回避のため、2001年4月からの、預金の払い戻し保証上限を1000万円とする「ペイオフ」の解禁を延期するよう求めた。日銀に対しては、金融の量的緩和に踏み切るべきだと提唱した。

その後の動き

 ペイオフの凍結解除を2002年4月まで延期する改正預金保険法が成立(2000年5月)
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1999年7月医療の改革を急げ 新世紀への五つの提言

 日本の先端医療を検証した結果、がん克服に国を挙げて取り組む米国に比べ、日本のがん対策は極めて貧弱であることが分かった。提言では、▽がん死亡「1割減」へ総力を挙げよ▽世界水準の新薬開発をめざせ▽生命科学10か年戦略を策定せよ▽医療機関の治療実績を公表せよ▽偏差値だけで医師の卵を選ぶな――と提唱した。

その後の動き

 政府が「ミレニアム・プロジェクト」(千年紀事業)を決定。認知症やがん、糖尿病、高血圧など高齢者のかかりやすい病気の遺伝子情報を解明し、画期的な新薬の開発に着手する方針を盛り込む(1999年12月)
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1999年11月社会保障制度改革への五つの緊急提言

 少子・高齢化が急速に進み、老後の暮らしを支える社会保障制度への信頼が揺らぐ中、年金、医療、介護制度をはじめ、財政、少子化問題にも踏み込んで、5項目の緊急提言を行った。高齢者にもコスト意識を持ってもらうため、高齢者医療にも一定程度の「定率制」を導入するよう求めた。

その後の動き

 医療保険制度改革関連法が成立。70歳以上の高齢者の自己負担は入院、外来とも医療費の原則1割定率に(2000年11月)
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2000年2月地方新税制についての緊急提言

 石原慎太郎東京都知事が都議会に、大手銀行に対する法人事業税の外形標準課税導入案を提案し、波紋を広げた。この問題を受け緊急提言では、公平で安定的な地方財源の確保のために「全国同時、全業種を対象」とする法人事業税の外形標準化を2001年度から実施するよう求めた。

その後の動き

 全業種を対象にした外形標準課税を全国同時に導入(2004年4月)
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2000年5月憲法改正2000年試案

 国民的な憲法論議をさらに深めるため、そのたたき台となる憲法改正第2次試案を発表した。国民の権利と密接に絡む「公共の福祉」の内容として「国の安全や公の秩序」などを明示したほか、政党を憲法に初めて位置付けた。外部からの侵略や大規模災害に万全な対応ができるよう、新たに緊急事態条項を設けた。

その後の動き

 衆院憲法調査会が中間報告を議長に提出(2002年11月)
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2000年11月教育緊急提言 新世紀の担い手育てるために

 提言の第一に「『教育改革』を改革せよ」を掲げた。入試や学習指導要領のひんぱんな見直しなど技術的なレベルの「教育改革」を超えて、「子どもとは何か、育てるために何が大切か」という教育の原点に戻って考えることを求めた。責任ある自由を柱に教育基本法を新たに作り直すことを提唱した。

その後の動き

 教育基本法が制定以来59年ぶりに改正。同法の前文に教育の理念として「公共の精神を尊び」を追加(2006年12月)
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2001年3月デフレ阻止へ緊急提言

 日本経済がデフレ・スパイラルの危機に直面する中、この状況を打開するため6項目の緊急提言を行った。最大の責任は政治にあるとして、国民と市場の信頼を失った森首相は退陣し、ざん新な布陣の新内閣の下で、果断に政策を実行しなくてはならないと訴えた。金融当局に対しては、デフレ阻止にあらゆる手段を尽くすよう求めた。

その後の動き

 日本銀行が量的緩和を決定。その後も量的緩和を拡大(2001年3月)
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2001年4月日本再生 五つの提言

 森首相が退陣し、小泉内閣が発足した。新政権発足にあたり行った緊急提言では、▽大きなマップを描き、強力に実現せよ、デフレ脱出と改革の両立を期せ▽ポピュリズム的な政治手法を排せ▽「新傾斜生産方式」で生産再生をはかれ▽資本市場を育成し強い金融の構築を▽不良債権処理で10年不況に終止符を打て――と訴えた。

その後の動き

 民間金融機関が保有する持ち合い株式を売却する際の受け皿となる銀行等保有株式取得機構が発足(2002年1月)、新証券税制がスタート(2003年1月)
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2001年10月「世界の危機 日本の責任」緊急提言

 2001年9月の米同時テロは世界を震撼しんかんさせ、米経済にも大きな打撃を与えた。緊急提言では、政治・経済両面で日本の取るべき道を示した。具体的には、▽テロ対策法案の成立を急げ▽「一国平和主義」意識を捨てよ▽自衛隊に領域警備任務を与えよ▽集団的自衛権の行使を認めよ▽緊急経済対策を早急に――などと提唱した。

その後の動き

 テロ対策特別措置法などテロ関連法が成立(2001年10月)。米軍などに燃料補給などを行うため海上自衛隊艦船をインド洋に派遣(同11月)
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2002年5月個人情報保護法案・人権擁護法案の修正試案提言

 国会で審議入りした両法案について修正試案を緊急提言した。個人情報を保護する法制の整備と新たな人権救済機関の設置は時代の要請にかなうものであるが、その一方で、国民の「知る権利」を保障する「表現の自由」を損なうことがあってはならないからだ。個人情報保護法案については、「透明性の確保」の原則は報道分野への適用を除外することなどを求めた。

その後の動き

 個人情報保護法が成立(2003年5月)
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2002年9月目指すべき税制改革の提言

 読売新聞が実施した「税制改革に関する全国世論調査」の結果は、国民が悪性デフレにあえぐ日本経済の危機克服に、大胆で効果的な税制改革と大幅な減税を求めていることを示した。提言では、小泉首相に税制改革に指導力を発揮することを求めた。消費喚起策として、生前贈与の円滑化を軸とした相続税・贈与税の見直しに取り組むことを提唱した。

その後の動き

 与党が、相続税・贈与税の最高税率を70%から50%に引き下げることを柱とする税制改正大綱を決定(2002年12月)
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2003年3月有事下の経済危機 六つの提言

 イラク情勢が緊迫化する中、東京株式市場の株価が終値でも8000円を割り、20年前の水準に落ち込んだ。提言では、小泉首相が大胆な政策転換で「デフレを終わらせる」と宣言し、デフレ脱却に最優先で取り組むよう求めた。不良債権処理の加速が存続可能な企業の倒産につながらないよう現実路線での処理を提唱した。

その後の動き

 りそなホールディングスへの公的資金の注入を決定(2003年5月)
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2004年5月憲法改正2004年試案

 1994年試案、2000年試案の骨格を踏襲しながら、前文に、「個人の自律」「相互の協力」の精神の下に、「自由で活力があり、かつ公正な社会」を目指すことを盛り込むなど、国の理念、基本的価値をより明確にした。新たに家族条項を設けるとともに、生命倫理、情報享受の権利の規定を明文化した。

その後の動き

 憲法改正の手続きを定める国民投票法が成立(2007年5月)
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2008年4月年金改革に関する提言

 提言は、すべての国民による応分の負担で支え合いの仕組みを強化し、年金制度の持続可能性を高めることで、超高齢時代の老後保障を確実にすることを目指した。現行の社会保険方式を基本に、基礎年金の受給に必要な加入期間を25年から10年に短縮し、最低保障年金を創設して月5万円を保障することを提唱した。

その後の動き

 厚生労働省が、基礎年金の最低保障機能強化を柱とした年金制度改革の原案を提示。基礎年金の受給資格期間の10年程度への短縮、パート労働者への厚生年金適用拡大などを盛り込む(2008年9月)
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2008年10月医療改革に関する提言

 年金改革提言に続き、超少子高齢社会にふさわしい医療・介護の社会保障の方策を打ち出した。提言は、お産、救急医療、認知症の介護などが安心して受けられるよう、直ちに実施すべき「緊急対策5項目」と、中長期にわたる「構造改革5本の柱」からなる。財源として、2011年度までに消費税を「社会保障税」に切り替えて、税率を10%に引き上げるよう提唱した。

その後の動き

 政府の社会保障国民会議が、社会保障制度について「機能強化が必要」として給付拡充を求める最終報告を提出。機能強化で追加的に必要となる財源額は、社会保険方式の場合、2015年度に消費税率換算で3・3~3・5%、税方式では同年度に6~11%が必要と試算(2008年11月)
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2010年5月経済再生に向けた緊急提言

 民主党政権が誕生しても、デフレ克服のメドは一向に立たなかった。提言では、鳩山内閣に対し、財源なきバラマキ政策を改め、成長を促す政策に転換することを求めた。法人税実効税率の20%台への引き下げを目指すとともに、新たな通商戦略を策定するよう提唱した。

その後の動き

 菅内閣が法人税実効税率を「主要国並み」に引き下げるとする新成長戦略を閣議決定。自民党が参院選公約に法人税実効税率の引き下げについて、20%台が目安と明記(2010年6月)
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2011年8月震災復興緊急提言

 東日本大震災の発生から5か月を経過しても、ままならない復旧・復興に国民のいらだちは募った。提言では、菅首相の早期退陣で人心一新を断行し、与野党協調の新体制を構築することを求めた。また、▽消費税率上げで財源確保▽暮らしの再建が最優先だ▽放射能に苦しむ福島を救え▽電力危機を直視すべきだ――と提唱した。

その後の動き

 東日本大震災の被災地の復興を加速させるため、規制や税制などで特例を設ける復興特区法が成立(2011年12月)。復興の司令塔となる復興庁が発足(2012年2月)
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2013年5月医療改革に関する提言

 2008年の医療改革提言に続き、医療の国際競争力を高め、日本の成長に弾みをつけるための改革案を提言した。日本の医薬品と医療機器は国際競争力に乏しく、多額の貿易赤字で成長の足かせになっているからだ。医療を成長のエンジンにするため、医療産業の国際競争力の強化や、規制改革の加速、国家戦略の強化などを提唱した。

その後の動き

 政府が「健康・医療戦略」を決定。▽病気の予防や食事・運動指導などのサービスを提供する産業の支援▽医薬品・医療機器の輸出促進に向けた税関手続きの電子化推進――などを盛り込む(2013年6月)。医療研究の司令塔となる国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」が発足(2015年4月)
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2017年2月社会保障に関する提言

 人口減、少子高齢化の現実に立ち向かい、経済成長を確かなものとするには、子育てや介護の環境を大きく改善しなければならない。▽カギは1~2歳児保育だ▽安心の介護と認知症対策を▽保育・介護の人材確保を急げ▽働き方改革で担い手を支援▽あらゆる資金の活用を―の5項目を提言し、政府・自治体のみならず、企業など民間の力の結集も求めた。

その後の動き

 政府の「子育て安心プラン」(2017年6月)や地域包括ケアシステム強化法成立(同5月)、介護報酬改定(2018年4月)で主要部分が実現。
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2020年6月新型コロナウイルスに関する提言(第1次提言)

 新型コロナウイルスは、日本で900人を超える死者を出し、経済・社会活動を様々な形で止め、国民の間に大きな不安を広げた。感染症に強い社会を築くため、▽感染症対策不在から脱せよ▽「コロナ不況」脱却に全力を▽首相直属の本部を設けよ▽国は地方任せにするな▽休校でも学習機会の確保を▽国際協調の機運を取り戻せ▽コロナ差別を許さない風潮を―の7項目の緊急提言をまとめた。

その後の動き

 政府はPCR検査体制を拡充し、1日の検査能力は2021年3月末までに17万5000件を上回る水準となり、2023年4月には42万件近くに達した。また、2021年2月には、新型インフルエンザ等対策特別措置法等を一部を改正する法律が施行され、新型コロナ感染者に対する偏見や差別を防止する規定が盛り込まれた。
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2021年3月新型コロナウイルスに関する提言(第2次提言)

 新型コロナウイルス対策で1都3県に出された緊急事態宣言が解除されたタイミングでの提言。入院できない患者が続出し、医療体制のもろさを露呈した。感染力が高いとされる変異ウイルスの流行が懸念される中、コロナ対策の長期化を前提とし、感染再拡大を抑止しうる体制を戦略的に構築するため、以下の対策を提言した。▽パンデミックでは病床を「有事用」に▽感染爆発に耐える医療計画策定▽国はワクチン確保に全力を▽変異ウイルス 監視で封じ込め▽仮設医療・療養施設の展開を迅速に▽看護師の負担軽減を徹底▽保健所の職員を増員せよ

その後の動き

 厚生労働省は提言直後の3月24日、「通常時」と「緊急時」の2段階に分けた医療計画の整備を全都道府県に要請。新型コロナ感染者を受け入れる確保病床数は、提言当時の約3万床から4万6000床余(2023年4月時点)まで増えた。2023年秋から、感染症危機に即応する司令塔機能を担う「内閣感染症危機管理統括庁」を発足させることが決まった。
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2022年11月提言 防衛の視座

 一段と厳しさを増す安全保障環境の下、いかに日本の平和と繁栄を守り抜くか。戦後の安保政策の大転換を前に必要な取り組みとして、2022年11月に以下を提言しました。▽「総合的な国力」の視点を▽「反撃能力」を保有し、抑止力の向上を▽長期に国土を守る「継戦能力」の強化を

その後の動き

 政府は提言直後の2022年12月、国家安全保障戦略と防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の3文書を改定し、抜本的な防衛力強化に乗り出した。23年6月には国会で、防衛産業への支援を強化する防衛装備品生産基盤強化法と、防衛費増額のための財源確保法が成立した。
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2024年4月提言 人口減抑制 総力で

日本の総人口は、2100年には現在からほぼ半減するとの予測もあり、手をこまねいていれば社会の維持が困難になる恐れがある。少子化の加速を抑え、将来にわたって社会の活力を持続させるため、以下の7項目の対策を提言した。▽結婚から育児 切れ目なく支援 「2人目の壁」取り払う▽若者が希望を持てる賃上げ 「不本意な非正規」なくそう▽多様な働き方 選べる社会に 長時間労働を前提とせず▽政治は財源の合意形成図れ 保険・税のベストミックスを▽強力な推進体制 政府に構築 恒久的な対策本部新設へ▽住み続けたい地域づくり 地方都市からの流出防ぐ▽外国人・高齢者 活力維持へ重要 「育成就労」「特定技能」着実に

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読売憲法改正試案全文

読売新聞は1994、2000、2004年の3回にわたり、憲法改正試案を発表しました。以下は、読売憲法改正試案全文です。

前文

 日本国民は、日本国の主権者であり、国家の意思を最終的に決定する。国政は、正当に選挙された国民の代表者が、国民の信託によってこれに当たる。

 日本国民は、個人の自律と相互の協力の精神の下に、基本的人権が尊重され、国民の福祉が増進される、自由で活力があり、かつ公正な社会をめざす。

 日本国民は、民族の長い歴史と伝統を受け継ぎ、美しい国土や文化的遺産を守り、これらを未来に活かして、文化及び学術の向上を図り、創造力豊かな国づくりに取り組む。

 日本国民は、世界の恒久平和を希求し、国際協調の精神をもって、国際社会の平和と繁栄と安全の実現に向け、不断の努力を続ける。

 地球環境は、人類の存続の基盤であり、日本国民は、国際社会と協力しながら、その保全に努め、人間と自然との共生を図る。

 日本国民は、これらの理想と目的を達成し、国際社会において、名誉ある地位を占めることを念願する。

 この憲法は、日本国の最高法規であり、国民はこれを遵守しなければならない。

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第一章 国民主権(94年試案で新設)

第一条(国民主権)主権は、国民に存する。

第二条(主権の行使)国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じ、及び憲法改正のための国民投票によって、主権を行使する。

第三条(政党)

  1. 国民は、その政治的意思形成に資するため、自由に政党を結成することができる。
  2. 政党は、国民主権の原理を尊重し、国民の政治的意思を集約し、統合する役割を果たし、民主政治の発展に努めなければならない。
  3. 政党は、政治活動に要する資金の収支を国民に明示しなければならない。

第四条(国民の要件)日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

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第二章 天皇(現行第一章)

第五条(天皇の地位)天皇は、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、国民の総意に基づく。

第六条(皇位の継承)皇位は、世襲のものであって、法律の定めるところにより、これを継承する。

第七条(天皇の権能の限界、天皇の国事行為の委任、摂政)

  1. 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
  2. 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
  3. 法律の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。この場合には、第一項の規定を準用する。

第八条(天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認)天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う。

第九条(天皇の任命権)

  1. 天皇は、衆議院の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
  2. 天皇は、参議院の指名に基づいて、憲法裁判所の長たる裁判官を任命する。
  3. 天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。この場合の内閣の指名は、参議院の同意を得たものでなければならない。

第一○条(天皇の国事行為)天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、次の国事に関する行為を行う。

  1. 一 国を代表して、外国の大使及び公使を接受し、また、全権委任状及び大使、公使の信任状、批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
  2. 二 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
  3. 三 国会召集の詔書を発すること。
  4. 四 衆議院の解散詔書を発すること。
  5. 五 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
  6. 六 国務大臣及び法律の定めるその他の公務員の任免を認証すること。
  7. 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
  8. 八 栄典の授与を認証すること。
  9. 九 儀式を行うこと。
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第三章 安全保障(現行第二章 戦争の放棄)

第一一条(戦争の否認、大量破壊兵器の禁止)

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを認めない。
  2. 日本国民は、非人道的な無差別大量破壊兵器が世界から廃絶されることを希求し、自らはこのような兵器を製造及び保有せず、また、使用しない。

第一二条(自衛のための軍隊、文民統制、参加強制の否定)

  1. 日本国は、自らの平和と独立を守り、その安全を保つため、自衛のための軍隊を持つことができる。
  2. 前項の軍隊の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属する。
  3. 国民は、第一項の軍隊に、参加を強制されない。
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第四章 国際協力(94年試案で新設)

第一三条(理念)日本国は、地球上から、軍事的紛争、国際テロリズム、自然災害、環境破壊、特定地域での経済的欠乏及び地域的な無秩序によって生じる人類の災禍が除去されることを希求する。

第一四条(国際活動への参加)前条の理念に基づき、日本国は、確立された国際的機構の活動、その他の国際の平和と安全の維持及び回復並びに人道的支援のための国際的な共同活動に、積極的に協力する。必要な場合には、公務員を派遣し、軍隊の一部を国会の承認を得て協力させることができる。

第一五条(国際法規の遵守)日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する。

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第五章 国民の権利及び義務(現行第三章)

第一六条(基本宣言)国民は、すべての基本的人権を享有する。この憲法が保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。

第一七条(自由及び権利の保持責任)この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民は、常に相互に自由及び権利を尊重し、国の安全や公の秩序、国民の健全な生活環境その他の公共の利益との調和を図り、これを濫用してはならない。

第一八条(個人の尊厳)すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の利益に反しない限り、立法その他国政の上で、最も尊重されなければならない。

第一九条(法の下の平等)

  1. すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
  2. 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
  3. 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。ただし、法律で定める相当な年金その他の経済的利益の付与は、この限りではない。
  4. 栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第二○条(人格権)

  1. 何人も、名誉、信用その他人格を不当に侵害されない権利を保障される。
  2. 何人も、自己の私事、家族及び家庭にみだりに干渉されない権利を有する。
  3. 通信の秘密は、これを侵してはならない。

第二一条(思想及び良心の自由)思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二二条(信教の自由及び公金の支出制限)

  1. 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。
  2. 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
  3. 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
  4. いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
  5. 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

第二三条(表現の自由、情報の享受等)

  1. 言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  2. 検閲は、これをしてはならない。
  3. 何人も、適正な情報の流通を享受する権利を有する。
  4. 個人情報は、濫用から保護される。

第二四条(集会及び結社の自由)何人も、集会及び結社の自由を有する。

第二五条(居住及び移転、国籍離脱の自由)

  1. 何人も、公共の利益に反しない限り、居住及び移転の自由を有する。
  2. すべて国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を保障される。

第二六条(学問の自由)学問の自由は、これを保障する。

第二七条(家族・婚姻)

  1. 家族は、社会の基礎として保護されなければならない。
  2. 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
  3. 財産権、相続、離婚、その他の家族及び婚姻に関する事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第二八条(生存権、国の社会的使命、社会連帯)

  1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
  3. 国民は、自己の努力と相互の協力により、社会福祉及び社会保障の向上及び増進を図るものとする。

第二九条(人為による生命操作等)人為による人の生命の操作及び生成は、人及びその生命の尊厳の保持、生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を及ぼすおそれのあるときは、法律によって制限し、又は禁止することができる。

第三○条(環境権)

  1. 何人も、良好な環境を享受する権利を有し、その保全に努める義務を有する。
  2. 国は、良好な環境の保全に努めなければならない。

第三一条(教育を受ける権利)

  1. すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
  2. すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子どもに普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。

第三二条(勤労の権利及び義務)

  1. すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
  2. 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
  3. 児童は、これを酷使してはならない。

第三三条(労働者の団結権)勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第三四条(職業選択及び営業の自由)何人も、公共の利益に反しない限り、職業選択及び営業の自由を有する。

第三五条(財産権、知的財産制度の整備)

  1. 財産権は、これを侵してはならない。
  2. 財産権の内容は、公共の利益に適合するように、法律でこれを定める。
  3. 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。
  4. 国は、知的創造力を高め、活力ある社会を実現するため、知的財産及びその保護に関する制度の整備に努めなければならない。

第三六条(納税の義務)国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

第三七条(罪刑法定主義及び法定手続きの保障)何人も、適正な法律及び法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三八条(裁判を受ける権利)何人も、裁判所において裁判を受ける権利を有する。

第三九条(逮捕の要件)何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第四○条(留置又は勾留の要件、不法勾留に対する保障)何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、留置又は勾留されない。また、何人も、正当な理由がなければ、勾留されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第四一条(住居の不可侵)

  1. 何人も、第三九条の場合を除いては、正当な理由に基づいて裁判官が発する令状によらなければ、その住居、書類及び所持品について侵入、捜索及び押収を受けることはない。
  2. 捜索又は押収は、捜索する場所及び押収する物を明示する各別の令状によらなければならない。

第四二条(拷問及び残虐刑の禁止)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

第四三条(刑事被告人、勾留された被疑者の権利)

  1. すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
  2. 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を十分に与えられ、また、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。
  3. 刑事被告人及び勾留された被疑者は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付する。

第四四条(自己に不利益な供述、自白の証拠能力)

  1. 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
  2. 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く留置若しくは勾留された後の自白は、これを証拠とすることができない。
  3. 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第四五条(遡及処罰の禁止、一事不再理)何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。

第四六条(刑事補償請求権)何人も、留置又は勾留された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

第四七条(犯罪被害者の権利)

  1. 生命又は身体を害する犯罪行為による被害者又はその遺族は、法律の定めるところにより、国の救済を受けることができる。
  2. 生命又は身体を害する犯罪行為による被害者又はその遺族は、法律の定めるところにより、当該事件の処理と結果について司法機関から説明を受け、裁判に際して意見を述べることができる。

第四八条(公務員を選定罷免する権利、公務員の性質、普通選挙の保障、投票の秘密の保障)

  1. 国会議員、地方自治体の長及びその議会の議員その他の公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
  2. すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
  3. 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
  4. すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。

第四九条(請願権)何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第五○条(国の行政情報の開示請求権)何人も、法律の定めるところにより、国に対して、その事務に係る情報について、開示を求めることができる。

第五一条(国及び公共団体の損害賠償責任)何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

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第六章 国会(現行第四章)

第五二条(立法権及び役割)

  1. 立法権は、国会に属する。
  2. 国会は、国民の代表機関として、国政の適正な運営を図る。

第五三条(両院制)国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

第五四条(両議院の組織)

  1. 両議院は、選挙された議員でこれを組織する。
  2. 議員は、全国民を代表する。
  3. 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

第五五条(議員及び選挙人の資格)両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。ただし、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

第五六条(衆議院議員の任期)衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

第五七条(参議院議員の任期)参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

第五八条(選挙に関する事項)選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

第五九条(両議院議員の兼職の禁止)何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

第六○条(議員の歳費)両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

第六一条(議員の不逮捕特権)両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

第六二条(議員の発言及び表決の無責任)両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。

第六三条(常会)国会の常会は、内閣が毎年一回その召集を決定する。

第六四条(臨時会)内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

第六五条(衆議院の解散及び特別会、参議院の緊急集会)

  1. 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
  2. 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
  3. 前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。

第六六条(資格争訟の裁判)両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第六七条(定足数、表決)

  1. 両議院は、各々その在籍議員の三分の一以上の出席がなければ、議決することができない。
  2. 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

第六八条(会議の公開、会議録、表決の記載)

  1. 両議院の会議は、公開とする。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
  2. 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、かつ一般に頒布しなければならない。
  3. 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

第六九条(役員の選任、議院規則・懲罰)

  1. 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
  2. 両議院は、各々その会議その他の手続き及び内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第七○条(法律案の議決、衆議院の優越)

  1. 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
  2. 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の過半数で再び可決したときは、法律となる。
  3. 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
  4. 第二項の規定による衆議院の再議決は、参議院の議決後、国会休会中の期間を除いて六十日を経なければならない。
  5. 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなし、出席議員の過半数で再び可決して法律とすることができる。

第七一条(衆議院の予算案先議、予算案議決に関する衆議院の優越)

  1. 予算案は、さきに衆議院に提出しなければならない。
  2. 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第七二条(条約の承認に関する衆議院の優越)条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

第七三条(人事案件の参議院の優越)

  1. 法律で定める重要な公務員の就任については、国会の議決を経なければならない。
  2. 前項の案件は、さきに参議院に提出しなければならない。
  3. 第一項の議決については、衆議院で参議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が、参議院の可決した案件を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、参議院の議決を国会の議決とする。

第七四条(議院の国政調査権)両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

第七五条(閣僚の議院出席の権利と義務)内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案の内容及びその取り扱いについて発言するため議院に出席することができる。また、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第七六条(弾劾裁判所、訴追委員会)

  1. 参議院に、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、参議院議員で組織する弾劾裁判所を置く。
  2. 衆議院に、前項の訴追のため、衆議院議員で組織する訴追委員会を置く。
  3. 訴追及び弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
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第七章 内閣(現行第五章)

第七七条(行政権)行政権は、内閣に属する。

第七八条(内閣の組織、国会に対する連帯責任)

  1. 内閣は、法律の定めるところにより、内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
  2. 内閣総理大臣は、内閣を代表し、国務大臣を統率する。
  3. 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
  4. 内閣は、行政権の行使について、国会に対し、連帯して責任を負う。

第七九条(内閣総理大臣の指名、衆議院の優越)内閣総理大臣は、衆議院議員の中から衆議院の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だって、これを行う。

第八○条(国務大臣の任命及び罷免)

  1. 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。ただし、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
  2. 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

第八一条(内閣の解散権、内閣不信任決議の効果)

  1. 内閣は、衆議院を解散することができる。
  2. 内閣は、衆議院で不信任の決議案が可決され、又は信任の決議案が否決されたときは、十日以内に衆議院を解散しない限り、総辞職をしなければならない。

第八二条(内閣総理大臣の不在及び新国会の召集と内閣の総辞職)内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

第八三条(総辞職後の内閣)前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで、引き続きこの憲法の定める職務を行う。ただし、衆議院の解散権は、行使できない。

第八四条(内閣総理大臣の職務)内閣総理大臣は、内閣を代表して法律案、予算案その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。

第八五条(内閣総理大臣の統括権)内閣総理大臣は、行政各部を統括する。

第八六条(内閣総理大臣の臨時代理)

  1. 内閣総理大臣に事故あるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、臨時代理たる国務大臣が内閣総理大臣の職務を行う。
  2. 前項の場合に備え、内閣総理大臣は、あらかじめ臨時代理となる国務大臣を指定しておかなければならない。

第八七条(内閣の職務)内閣は、他の一般行政事務のほか、次の事務を行う。

  1. 一 法律を誠実に執行し、国務を統括管理すること。
  2. 二 外交関係を処理すること。
  3. 三 条約を締結すること。ただし、事前に、場合によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
  4. 四 法律の定める基準に従い、国の公務員に関する事務を掌理すること。
  5. 五 国会の召集を決定すること。
  6. 六 予算案を作成して国会に提出すること。
  7. 七 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  8. 八 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
  9. 九 栄典の授与を決定すること。

第八八条(国務大臣の特典)国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。ただし、これがため、訴追の権利は、害されない。

第八九条(緊急事態の宣言、指揮監督)

  1. 内閣総理大臣は、国の独立と安全又は多数の国民の生命、身体若しくは財産が侵害され、又は侵害されるおそれがある事態が発生し、その事態が重大で緊急に対策をとる必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、全国又は一部地域について、緊急事態の宣言を発することができる。
  2. 前項の宣言には、その区域、宣言を必要とする事態の概要及び宣言の効力が生ずる日時を明示しなければならない。
  3. 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発した場合には、法律に基づき、自衛のための軍隊のほか、警察、消防等の治安関係機関を一時的に統制し、それぞれの機関の長を直接に指揮監督できる。また、前段に定めるもの以外の国の機関、地方自治体その他の行政機関に、必要な指示及び命令を行うことができる。

第九○条(国会承認と宣言の解除)

  1. 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発したときは、二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。衆議院が解散されているときは、緊急集会による参議院の承認を求めなければならない。
  2. 内閣総理大臣は、国会が緊急事態の宣言を承認しなかったとき、又は宣言の必要がなくなったときは、すみやかに宣言を解除しなければならない。

第九一条(内閣総理大臣の緊急措置、基本的人権の制限)

  1. 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発した場合には、国民の生命、身体又は財産を守るためにやむをえないと法律が認める範囲内で、身体、通信、居住及び移転の自由並びに財産権を制限する緊急の措置をとることができる。
  2. 内閣総理大臣は、前項の措置をとる場合には、この憲法が国民に保障する基本的人権を尊重するよう努めなければならない。
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第八章 司法(現行第六章)

第九二条(司法権、憲法裁判所及び裁判所、特例の裁判所の禁止、国民の司法参加)

  1. すべて司法権は、憲法裁判所、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
  2. 特例の裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。
  3. 司法への国民の参加については、法律でこれを定める。

第九三条(憲法裁判所の違憲立法審査権)憲法裁判所は、一切の条約、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する唯一の裁判所である。

第九四条(憲法裁判所の権限)憲法裁判所は、次の事項を管轄する。

  1. 一 条約、法律、命令、規則又は処分について、内閣又はそれぞれの在籍議員の三分の一以上の衆議院議員若しくは参議院議員の申し立てがあった場合に、法律の定めるところにより、憲法に適合するかしないかを審判すること。
  2. 二 具体的訴訟事件で、最高裁判所又は下級裁判所が求める事項について、法律の定めるところにより、憲法に適合するかしないかを審判すること。
  3. 三 具体的訴訟事件の当事者が最高裁判所の憲法判断に異議がある場合に、法律の定めるところにより、その異議の申し立てについて、審判すること。

第九五条(憲法裁判所の判決の効力)憲法裁判所が、条約、法律、命令、規則又は処分について、憲法に適合しないと決定した場合には、その決定は、法律で定める場合を除き、それ以降、あらゆる国及び地方自治体の機関を拘束する。

第九六条(憲法裁判所の裁判官、任期、定年)

  1. 憲法裁判所は、その長たる裁判官及び八人のその他の裁判官で構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、参議院の指名に基づいて内閣が任命する。
  2. 憲法裁判所の裁判官は、任期を八年とし、再任されない。
  3. 憲法裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

第九七条(上告裁判所としての最高裁判所)最高裁判所は、憲法裁判所の管轄以外の事項につき、裁判を行う終審裁判所とする。

第九八条(最高裁判所の裁判官、任期、定年)

  1. 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
  2. 最高裁判所の裁判官は、任期を五年とし、再任されることができる。
  3. 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

第九九条(下級裁判所の裁判官・任期・定年)下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には退官する。

第一○○条(憲法裁判所及び最高裁判所の規則制定権)

  1. 憲法裁判所及び最高裁判所は、訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
  2. 検察官は、前項に規定する規則に従わなければならない。
  3. 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

第一○一条(裁判官の独立、身分保障、報酬)

  1. すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。
  2. すべて裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。
  3. すべて裁判官は、定期に相当額の報酬を受ける。裁判官の独立を害することとなる報酬の減額の決定は、これをしてはならない。

第一○二条(裁判の公開)

  1. 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う。
  2. 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序、善良の風俗又は当事者の私生活の利益を害するおそれがあると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第五章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
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第九章 財政(現行第七章)

第一○三条(財政処理の基本原則)国の財政は、国会の議決に基づいて、内閣が、これを処理する。国は、健全な財政をめざして、財政を適正に維持及び運営しなければならない。

第一○四条(課税)あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

第一○五条(国費の支出及び国の債務負担)国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

第一○六条(予算案)

  1. 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その議決を得なければならない。
  2. 継続支出の必要があるときは、年限を定め、継続費として国会の議決を得なければならない。

第一○七条(予備費)

  1. 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
  2. すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

第一○八条(皇室財産・皇室の費用)すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を得なければならない。

第一○九条(決算検査、会計検査院)

  1. 国の収入支出の決算は、会計検査院がすべて毎年度検査し、内閣は、次の年度にすみやかに、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
  2. 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

第一一○条(財政状況の報告)内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

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第十章 地方自治(現行第八章)

第一一一条(地方自治の基本原則)

  1. 地方自治は、地方自治体及びその住民の自立と自己責任を原則とする。
  2. 地方自治体の組織及び運営に関する事項は、前項の原則を尊重して、法律でこれを定める。
  3. 地方自治体は、国と協力して、住民の福祉の増進に努めなければならない。

第一一二条(地方議会、長・議員等の直接選挙)

  1. 地方自治体には、法律の定めるところにより、議会を設置する。
  2. 地方自治体の長及びその議会の議員は、その地方自治体の住民が直接これを選挙する。

第一一三条(地方自治体の権能、条例制定権、財政)

  1. 地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の趣旨に反しない範囲内で条例を制定することができる。
  2. 地方自治体の財政は、国の財政や経済情勢を考慮し、自主財源を基礎とする健全な財政をめざして、適正に維持及び運営されなければならない。

第一一四条(特別法の住民投票)特定の地方自治体に適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

第一一五条(地方自治体の行政情報の開示請求権)地方自治体の住民は、条例の定めるところにより、当該地方自治体に対して、その事務に係る情報について、開示を求めることができる。

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第十一章 改正(現行第九章)

第一一六条(改正の手続き及びその公布)

  1. この憲法の改正は、改正案につき、各議院の在籍議員の三分の二以上の出席により、出席議員の過半数の賛成で議決し、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。
  2. 前項の規定にかかわらず、この憲法の改正は、改正案につき、各議院の在籍議員の三分の二以上の出席で、出席議員の三分の二以上の賛成で可決することにより成立する。
  3. 第一項の承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、有効投票の過半数の賛成を必要とする。
  4. 第一項又は第二項の憲法改正案は、国会議員又は内閣が提出することができる。
  5. 第一項の承認を経たとき、又は第二項の可決があったときは、天皇は、国民の名で、直ちにこれを公布する。
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