主筆メッセージ

渡辺恒雄
撮影:篠山紀信

 読売新聞は2024年11月に創刊150周年を迎えます。1874年、東京・虎ノ門の2階建ての小さな建物で始まり、関東大震災と終戦直前の空襲で2度も社屋を失いましたが、戦後、全国に強固な販売店網を構築し、飛躍的な発展を遂げました。正確で迅速な報道と、中道で良識ある社説を掲げ、世界一の発行部数を誇る新聞社に成長し、1994年には1000万部を超えました。日本を代表する新聞の座を確固たるものにし、今に続いています。

 本社は長年、報道機関として、新聞の制作・発行を通じ、民主主義の根幹となる健全な世論を育むという社会的使命を果たしてきました。この役割を安定的に続けられるよう、新聞発行以外の事業によって経営基盤を多角化、強化してきました。プロ野球・読売巨人軍を創設し、日本初の民間テレビ放送局・日本テレビや、読売日本交響楽団を設立するなど、社会に役立つ事業を次々に拡大してきたほか、老舗出版社・中央公論新社をグループに迎え入れたのもその一例です。2021年には、よみうりランドを完全子会社化し、グループ7社目の基幹会社に位置づけました。

 現在、関連会社・団体は約140にのぼり、スポーツ、文化、エンターテインメント、医療、福祉と幅広い分野で事業を展開することで、国民生活の向上と日本の発展に積極的に貢献しています。また、脱炭素をグループの重点施策の一つに掲げ、企業社会の一員として、温室効果ガスの削減などSDGsの達成に向けた積極的な行動を継続的に進めていきます。

 デジタル端末による情報化が進んだ結果、世界では、インターネット、ソーシャルメディアなどから情報を得る習慣が広がっています。この傾向は、世界中の生活、文化、人々の教養や言論、世論に大きな影響を与えており、短い文章などで発信するソーシャルメディアによって正確でない情報や、いわゆる「フェイクニュース」の拡散が繰り返されるなどの問題が生じています。

 こうしたデジタル社会にあって、政治、経済、国際、社会など各方面にわたるニュースを総合的、体系的に知り、知識を得るための媒体として、新聞の価値は年を追うごとに再評価されています。日本全国はもとより、海外の取材拠点に配置された記者による入念な取材に基づき、正確で質の高い情報を、全国の販売店網などを通じてお届けしています。

 読売新聞グループは、今後も日本で最も信頼される総合メディア集団として、皆様とともに歩んでいきたいと考えています。

読売新聞グループ本社
代表取締役主筆
渡辺 恒雄

主な経歴

読売新聞グループ本社代表取締役主筆

1926年(大正15年)、東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒。50年、読売新聞社入社。ワシントン支局長、政治部長、論説委員長、グループ本社代表取締役社長・主筆、同会長・主筆などを経て現職。著書に「反ポピュリズム論」(新潮新書)、「渡邉恒雄回顧録」(中公文庫)、「わが人生記」(中公新書ラクレ)、「派閥 保守党の解剖」(弘文堂)など多数。